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(第19回)四国霊場45番札所の麓に湧く温泉(愛媛県) - 心に残る日本の旅/温泉、ローカル線、宿 (井上晴雄)

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(第19回)四国霊場45番札所の麓に湧く温泉(愛媛県)

(古岩屋温泉)四国霊場第45番札所の麓に建つ、古岩屋荘/愛媛県

(地図を開く)愛媛県上浮穴郡久万高原町

■四国の風物詩といえば讃岐うどん、四万十川、阿波踊りなどいろいろ思い浮かぶが、そのひとつに「お遍路さんのいる光景」がある。お遍路さんといえば、先日、四国をよく旅している人がこんなことを話していた。「ひたすら歩く日々の中で、温泉に巡りあうのは至福の極みです。」なぜかその言葉がとても印象に残った。遍路道の近くにある温泉を探してみるといくつか見つかったが、今回、愛媛県の山中に湧き、第45番札所岩屋寺の麓にある古岩屋温泉に足を運んでみることにした。あわよくば、お遍路さんと会えたらいいなと思いながら、賑やかな大阪の街を後にした。



古岩屋(車窓)
JR新大阪駅から新幹線「のぞみ」、特急「しおかぜ」と乗り継ぎ、JR松山駅に着いた頃にはもう陽は高く昇っていた。駅前でJR四国バス落出行きに乗り換える。バスは市街地を過ぎると砥部焼で有名な砥部町の町並みを抜け、山間部に入った。国道33号線の勾配が次第に上がっていき、三坂峠と呼ばれる高所へと進んでいく。窓外には四国山地の山稜がなだらかに横たわり、標高470m近くまでに達すると、眼下には松山界隈の大パノラマが広がった。遥かには霞む瀬戸内海。カメラのシャッターを押すのが俄かに忙しくなった。久万高原町は標高500m付近にあり、「四国の軽井沢」とも呼ばれているまち。空気が澄んでいて満天の星空を仰げることから、本格的な天体観測をできる施設もあったりする。
古岩屋(バス)


■終点の久万高原バス停でバスを降り、伊予鉄久万バス停まで国道に沿って500mほど歩いた。スーパーマーケットや個人商店の並びを眺めていると、前方から、金剛杖の鈴をしゃんしゃん鳴らしながらお遍路さんの一団が近づいてきた。笈摺といわれる白装束を身に纏い、頭には円錐状の菅笠をかぶっているのでひと目でそれと分かる。驚いて道を空けようとしたとき、「こんにちは。」、「こんにちは。」と、菅笠の隙間から笑顔でしわくちゃになった顔が次々と現れた。会釈をしてしばらくしてから振り返る。お遍路さんといえば、どこかしら難しそうなイメージがあったが、全くの的外れだった。彼らは健脚で、背に印字された「南無大師遍照金剛」の文字はみるみるうちに小さくなっていった。



■伊予鉄久万バス停に着くと、運よく目的地に向かうバスが止まっていた。顔色のよいおばあさんが2人、前方の座席に座って運転手さんと何やら話をしている。地方に来ると地元の者同士は誰もが顔馴染みらしい。「今日はどこへ行ってなすった?」「久万で買い物しよったが。」とかいう話からはじまり、裏山で大きなイノシシが出たとか誰々の田では週末に苗を植えるとか、地元に住んでいないと分からないような話をしている。方言がきつくて、聞いてもあまり意味は分からないものの、表情を見ているだけでどこか心が和んだ。バスは低い峠を上り、段々畑の中を抜けていく。杉木立の曲がりくねった道を越えると、窓外には小さな集落が現れた。まるで時代を遡ったような古い母屋や茅葺き屋根を構えた民家までもあり、神域の面持ちがする。「バスにお乗りのお客様、降りられる100m前で乗務員にお知らせくださいませ。」と車内アナウンスが流れている。地方のバスに乗ると、時々、自由乗降区間といって、客の都合のよい場所で乗り降りできる区間がある。バス停にしても「00家前」などと、その周辺に住む人の苗字が使われていることがあって面白い。おばあさんたちが俄かに支度をしはじめた。「いつものところでええですか?」「ええです、いつもありがとうごぜえます」。道のたもとで大きな風呂敷包みを背負った2人はゆっくりとステップを降りていき、乗客は私だけとなった。


  ■バスは山の陰をくねりながら走り緩やかな勾配を上がっていく。行き交う車も人もない。道の両脇に巨木が迫ってくるに従って谷がどんどん狭まっていった。ふと窓外に目を遣ると、高さ数10mもあろう岩峰群が林立しているのが見えた。「あれは何でしょうか?」。運転手さんに尋ねると、「あれは国の名勝で、古岩屋といいます。」と説明してくれた。案内書を広げてみると、「古第三紀の久万層群に属する二名層の礫岩が侵食されて形成されたもので、四周が絶壁の独立岩峰や細い尾根で両側が絶壁の屏風岩など90峰ほどもある。」と書かれていた。普段は誰も足を踏み入れないような山奥に、こんな雄大な岩石群があるなんて、あまりにも神秘的だった。



■程なく走った清流に臨む小盆地の一角に、「国民宿舎古岩屋荘」と書かれた看板があった。「お疲れさまでした。古岩屋温泉にご到着です。ご乗車誠にありがとうございました。」私を降ろして無人となったバスは緑の中に消えていった。夕暮れが迫り、西の空が茜色に萌えていた。ふと車道脇を見下ろすと、涼しい木陰に清流が流れていた。気持ちよさそうだったので、少し足を浸してみた。「冷たい。」と思ったとき、川魚が驚いて砂を巻き上げて泳ぎ去る。川面が鏡になって、対岸の木々をゆらゆらと映し出していた。

古岩屋(外観)

■陽が山の端に隠れてから宿に入った。部屋は2階の一室で、せせらぎを眺望できる雰囲気のよい和室だった。1階のレストランに降りて、夕食をいただく。膳には川魚、山菜 、みそ汁、果物など山間の味わいが盛られていて美味しかった。「いい湯じゃったなあ。」「そうじゃなあ、一杯いきますか。」浴衣姿の人々が談笑しながら横切っていく。「今ならお風呂、空いてますよ。」係の方が丁寧に教えてくれたので、部屋に戻って手拭を下げて出かけた。



古岩屋(寺)
古岩屋(温泉
■古岩屋温泉の風呂は2階にあった。大浴場に入ると巨大な岩盤から湯が落ちていた。吉野朝時代に発見されたと伝わる歴史ある湯。まるで川の上流で岩の隙間に身を浸しているような感じだ。湯も滑らかで効き目もありそう。そんなことを思いながら、のんびり湯に浸かっていると、湯煙の向こうからひとりの老人が声を掛けてきた。「ひょっとして昼間にお会いした方でありませんか?」目を凝らして見ると、久万バス停付近ですれ違ったお遍路さんだった。昼間は遍路用具を身に纏っておられただけにすぐには分からなかったが、白い髭の特徴で思いだした。「お昼はどうも、ご苦労様です。」と言って雑談をはじめた。どうやら、あれから岩屋寺まで歩いて参拝してきたらしい。「風呂とはよいものですなあ。会社と家を往復していた頃には何も感じなかったことですが・・。」


話によれば老人は定年で退職したあと、お遍路さんとなって新たな生きがいを探しているのだという。「お陽様ですとか風ですとか木々の息吹ですとか・・当たり前のことが最近、嬉しく思えるようになりましてなあ・・。」そう言って、老人は湯に深々と浸かり、目をつぶった。自然と日々向き合い歩き続けることで、新たな心境に達したのだろうか。これも遍路を続ける中で得る功徳なのだろうか。そこら辺は定かではないが、そんな老人の姿を見ていると心がとても温まった。「大聖の祈る力のげに岩屋 石の中にも極楽ぞある」。老人は岩屋寺の御詠歌を何度も繰り返していた。当地に住んでいた法華仙人が一山を献上した寺、岩屋寺。数十mにも及ぶ岩峰が境内に屹立し、弘法大師が不動明王像を刻んで、石造一を厳峰に封じた寺・・・。


老人があまりに気持ち良さそうに湯に浸かっているので、何だか明日は岩屋寺まで歩いてみたくなった。そうすることで温泉の恵みを一層味わえることができるかもしれないと思った。それを話すと、「それはいいことですなあ。ありがたい、ありがたい。」と、老人はしみじみと答えた。


<国民宿舎古岩屋荘>

(泉質)単純温泉・(効能)リウマチ、疲労回復、美肌作用など・(外来入浴)可(大人300円、小学生150円、幼児100円/12~20時)

(住所)愛媛県上浮穴郡久万高原町

(電話)0892‐41‐0431

(交通)・JR松山駅からJR四国バス落出行きで1時間(または伊予鉄伊予市駅から久万行きで1時間)、伊予鉄バス上直瀬行きに乗り換え20分、古岩屋下車すぐ

松山自動車道松山ICから約45km(休み)無休
(宿泊)1泊2食付6800円~

(駐車場)30台

(レストラン)11~19時

<その他連絡先>

(久万高原町観光協会)0892-21-1192・(伊予鉄バス)089-948-3172・(伊予鉄久万バス)0892‐21‐0018・(JR四国バス松山)089‐943-5015・(岩屋寺)0892-57-0417

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